『下剋上受験』レビュー 

その他
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年間GPAが3.5/4で特待生なんて夢のまた夢という現実を見せられました。

中学受験界隈では『二月の勝者』が流行っておりますが、ここで敢えて『下剋上受験』という少し前に流行った本を紹介したいと思います。

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概要

ノンフィクション作品。主人公は一人の娘を持つ中卒の父親(著者である桜井氏)。奥様も中卒であり、このままでは娘も中卒になってしまうのではないかと危惧する。どうにかしてこの流れを変えていい大学行ってほしいので、東大に進学する人が多い桜陰を目指すことに。序章の時点で明かされるのだが、桜陰には受からなかったようだ。

文章はかなり平易です。大衆文学よりも簡単かな。ノンフィクションは受験生が読むと「つまんな」と途中でやめてしまうことが多い印象ですが、立場が想像しやすいのでサクサク読めると思います。

ドラマ化もしたこのノンフィクション作品、フィクションだと荒れたらしいです。そのように言われた理由をいくつか挙げてみます。

・スタートが五年の中盤、小学校のテストで満点を取るのが当たり前ではないような状態、全国統一小学生テストで偏差40代

いや…もうこの時点で桜陰に入るとか一般的受験生なら諦めますよ。良くも悪くも受験戦争を知らない人しか周囲にいなかったから「出来る」と考えて突撃したように感じますが。

・両親共に中卒

遺伝によって引き継がれる学習能力って確か五割ぐらいだったはずなのでそこまで気にすることでは無いと思うのですが、出版された当時は大荒れだったみたいです。「中卒の子がこんなに出来るわけがない」と。

・どこの塾にも入れない上、母親が協力的ではない

「自分は馬鹿だ」と言っているにも関わらず指導は自ら行っている上、母親が「やめよう」と誘惑してくるってどんなクソ環ky…もとい、有利とは言い難い環境なんでしょうか。

・著者の桜井氏もあまり頭がいいようには思えない

語彙力とか知識はどうでもいいのですが、地頭があまり良いようには感じられない上、「それは違う」と言いたくなる点がいくつかありました。特に一番反論したかったのは

「私たちの可能性を探るIQを知りたい」(178ページ7行目)

といってIQを調べ、偏差値はIQの半分が限界という記事を興味深いと評すること。ネットに転がってるIQテストなんてちょっと訓練していればあっさり解けるようになっているし、母集団の差によって偏差値は大きく変わります。大学受験の模試とかすごいですよ。進研模試で偏差値67だったのに駿台模試だと50割りますからね。他にも『人生のしくみ』や、手計算の意義が分からない等言いたくなるところはありましたが、中学受験の勉強とは関係ないので気にする必要は無いです。

・○○時まで一緒に勉強している

実際に読んでみてほしいので伏せさせていただきます。親子で一緒に○○時までやるっていうのは聞いたことが無い。知り合いに○○時の一時間前まで勉強している人はいたけど親は寝てるって言ってました。そこまで耐えられる小学生がいるのか怪しいですからね。

著者とご息女の気合

ご息女に対する思いは強烈でした。絶対に自分と同じ道を歩ませないという決意を感じました。どれぐらい気合が入っていたかについては是非本の方を読んでみてください。

でもこれ一緒に勉強しているから誤魔化せていますが、かなり教育虐待に近いので「この本の子はここまで頑張ってたから同じぐらい頑張れ」というのは絶対にやめましょう。本人がもっと勉強したいと強く望むならやらせてもいいと思いますが…。

私の父や母はどうなってもここまでしないですね。11時の段階でリビングにて勉強中の妹を差し置いて寝てますし。中三のころ成績がゴミくずだった私に父親が勉強を指導してきましたが、本当にクソだった…わかんないから聞いてんのに怒るだけで碌に教えてくれなかった思い出。学費・塾費を出してくれた点に関しては父に感謝していますが、これぐらい寄り添って勉強してくれたらこんなことにならなかったのかな…いやあの時の自分はどうしようもないクズだったから結局変わらなさそう。

実際にここまで追い上げてくる人はいるのか

ここまで極端では無いですが、「下剋上」を成し遂げた人は何人か見かけました。

・五年の夏から受験勉強を開始して6年前半の中盤あたりでSコースに食い込んだ人。

聖光志望で開始し、途中から面談で栄光志望に切り替え、栄光コースに入ることに成功。しかし栄光には落ちて浅野に行きました。でも彼は小5前期の統一テストで60越えてたらしいので基本能力はすでにあったはず。

・四谷のAコースから鎌倉学園に受かった人。

二人見ました。彼らは私が四谷に入塾する前(5年より前)から通塾していましたが、いつもAとBをウロウロしていました。大体偏差値45~50程度だったと思うので10以上上の学校に入ったことになります。

ブログだとたしか偏差値29だか39だかから開成目指して最終的に逗子開成に行った人のブログがあったと母親が言っていた記憶があります。といっても検索かけても出てこなかったので現在では見ることが出来ないです。

逆転合格を夢見るなら一度読むべき

私も大学受験時に逆転合格を夢見ていた現実見えてないアホだったのですが、これを読んで「嘘…俺小学生でも出来る程度のことしか出来て無かったの…?」ってなりました。桜井氏のご息女程度しか勉強していませんでしたね。高校生なのに。逆転合格を目指しているなら一度読んでみた方がいいです。こんだけ二人三脚で死力を尽くしても確実に合格できるわけでは無いという現実を見ることができます。本気で逆転合格を目指して勉強するのか、他の中学で妥協するか考える良い契機になるでしょう。と言っても個人的には無理そうでも挑戦することをお勧めしますけども。

合格するか微妙なライン以上の方も下からこんな風に勉強して追い上げてくる奴がいるということを知れるので読んだ方が良いと思います。

ちなみにドラマ版もあります。

参考書を買うな

最後にレビューとは関係ないですが、これだけは伝えさせてください。

塾に所属しているなら、作中で登場した参考書を購入してやらせるな

皆様ご存知だと思いますが、塾で購入したものをやっていれば十分ですし、あれこれ手を出すより一冊をやり込むことの方がはるかに大事です。kindleのハイライト機能が参考書のタイトル部分ほぼすべてに有効になっていましたが、不安に思って買う必要は無いです。

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