母親がこの本の3章が凄くいいから読んで紹介しろとうるさいので時間を見つけてちまちま読みました。中学受験を題材とした『金の角持つ子供たち』という小説です。ようやく読み終わったので紹介してみます。
内容
母親、受験生、塾講師3つの視点から小6受験生の1年間を見る話です。
・1章
1章は受験生となる俊介の母親、葉月が主人公です。サッカークラブでレギュラーに選ばれず、サッカーを辞めて中学受験をしたいと新小6の俊介が言い出す所から物語が始まります。それに葉月は賛同するのですが、耳が聞こえないし妹の問題や、給料もそこまで良くないので無理だと父親、浩一は主張します。結果、塾には通わせるが都内最難関国立中学である駒込中(筑駒がモチーフ?)への入学のみ認め、落ちたら公立中学に行くというところに落ち着きます。
・2章
2章は受験生である俊介が主人公です。時間軸は大体夏前~9月ごろ。夏合宿と小学校での誘惑が話のメインとなり、この章で俊介が受験をしたいと考えた本当の理由が分かります。その理由が本当に重い。また、応援していると言いながら受験を否定し、「小6の夏は一度きり」と誘惑の言葉を吐く小学校の先生とサッカークラブ生時代の友人たちによる誘いで塾をサボってしまい、弱音を担任講師に吐いてしまうシーンはちょっとだけ昔を思い出しました。
・3章
3章は俊介の担任講師である加地先生が主人公です。時間軸は後期~受験終了までです。何故中学受験するのか?それに意味はあるのか?ということに対する一つの回答が提示されます。
3章は是非読んでほしいのでかなり端折りました。
感想
・良かった点
ご都合主義な成功譚では無く上手く行かない上、余計な口出しをしてくる人が出てくるあたり随分リアルでしたね。あと加地先生が提示した意見は受験に対して肯定的では無い人に一度読んでいただきたい非常に良い内容でした。
・悪かった点
これ登場させる意味有ったか…?と言いたくなる登場人物がちょっと多い気がします。登場させないでもっと受験あるあるな悩みや苦しみを描いても良かった気が。
総評
小説としての出来は正直微妙だと思いました。重松清とかの方が余程上手い。しかし3章と2章の俊介と加地先生の話し合いで評価を覆せますね。文の難易度は入試に出題されてもおかしくないようなレベルなので、講習中に読書タイムがある方はそこで読んでみてもいいと思います。受験をするべきか迷っている方や、意味が無いと思っている方、受験をやめようかと考えている方にお勧めです。
ところで作中で出題された問題の答え25/17になったんですけど合っているんですかね?